「新電力の市場連動型プランはどのような仕組み?」
「市場連動型プランのメリットやリスクを知りたい」
従来の固定単価プランのほかに、市場連動型プランを採用している新電力もあります。
市場連動型プランは固定単価プランとは異なる特徴があるので、契約する前に仕組みを把握しておくことが重要です。
そこで本記事では、新電力の市場連動型プランの仕組みやリスク、上手な活用法について解説していきます。
本記事を最後まで読むことで、新電力の市場連動型プランについての理解が深まり、最適な料金プランを選択できるようになります。
市場連動型プランの基礎知識

市場連動型プランは、電力自由化により登場した新しい料金体系です。
まずは、市場連動型プランの基礎について覚えていきましょう。
- 市場連動型プランと固定単価プランの違い
- 電気料金の内訳(基本料金/従量料金/再エネ賦課金)
- 近年の価格推移と高騰事例
市場連動型プランと固定単価プランの違い
市場連動型プランと固定単価プランの違いは、こちらの表を参考にしてください。
項目 | 市場連動型プラン | 固定単価プラン |
料金単価の変動 | 市場価格に応じて定期的に変動する | 契約時に決まった単価で推移する |
燃料費調整額の有無 | 原則なし | あり |
節約のしやすさ | 時間帯を選べば節約効果が期待できる | 使用量を減らす以外の節約方法は限られる |
家計管理のしやすさ | 料金が予測しづらく不安定 | 料金が一定で管理しやすい |
リスク | 市場価格の高騰時に大幅な料金増加の可能性がある | 燃料費調整額の変動を除けば価格変動は小さい |
市場連動型プランは、日本卸電力取引所(JEPX)での価格に連動して料金単価が変動するのが最大の特徴です。
深夜など需要の少ない時間帯には単価が安くなりやすく、電気を使うタイミングを意識すれば節約につながる可能性があります。
その反面、寒波や災害などで供給がひっ迫すると市場価格が急騰し、数日で電気代が高騰するケースもあります。
一方の固定単価プランは、あらかじめ決められた料金単価で電気を利用する仕組みです。
家計の見通しが立てやすく、電気代の高騰リスクが低いのが利点です。
燃料費調整額の影響はありますが、基本的には電力使用量に応じた範囲での変動にとどまります。
それぞれの特徴を把握しておけば、どちらの料金プランが自分に合っているのかを判断しやすくなるね!
電気料金の内訳(基本料金/従量料金/再エネ賦課金)
電気料金は、おもに下記の3つの要素で構成されています。
- 基本料金
- 従量料金
- 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)
「基本料金」は契約アンペア数に応じて毎月定額で発生するもので、市場連動型プラン・固定単価プランを問わず一定です。
「従量料金」は、実際に使用した電力量に単価を掛けて計算されます。
市場連動型プランでは、従量料金が市場価格に連動して変動します。
「再エネ賦課金」は、国が定めた単価に基づき電力使用量に応じて加算され、すべての電力利用者が負担する費用です。
市場連動型プランの場合、おもに従量料金部分が変動することとなり、基本料金と再エネ賦課金は固定単価プランとほぼ同様の仕組みとなっています。
市場連動型プランでは、電気を使用する時間帯やタイミングが家計に直接影響を及ぼすよ。
近年の価格推移と高騰事例
市場連動型プランの5年分の価格推移を見てみましょう。
年度 | システムプライス(円/kWh) |
2020年 | 11.21 |
2021年 | 13.46 |
2022年 | 20.41 |
2023年 | 10.74 |
2024年 | 12.29 |
参考:JEPX スポット市場 | 市場情報 | 電力取引(2025年5月13日時点)
「システムプライス」とは、市場連動型プランの電気料金のベースとなる価格のことです。
1日24時間を30分単位に区切り、それぞれの時間帯の取引価格を合計した平均値となっています。
上記の表を見ると、2022年度のシステムプライスが高いことが分かります。
この時期に市場連動型プランを契約していた場合、通常よりも高い電気料金の支払いが発生しました。
市場連動型プランを検討する際は、急激な価格変動リスクを理解しておくことが重要だよ!
市場連動型が注目される背景

電力自由化により、消費者は電力会社や料金プランを選択できるようになりました。
その中でも市場連動型プランは、電力の使用時間帯や量に応じて料金を最適化できる柔軟性から注目を集めています。
ここからは、市場連動型が注目される背景について解説していきます。
- 日本卸電力取引所(JEPX)の仕組み
- 2020年~2021年の価格高騰とその要因
- 政府・経産省のガイドライン概要
日本卸電力取引所(JEPX)の仕組み
日本卸電力取引所(JEPX)は電力の卸売市場であり、発電事業者と小売電気事業者(新電力など)が電力を売買する公的な取引の場です。
電気は30分単位で入札や売買がおこなわれ、スポット価格は常に変動しています。
この市場価格は需要と供給のバランスや天候、液化天然ガス・石炭等の燃料価格などの多くの要素によって決まる仕組みです。
たとえば、冬場に寒波が来て電力需要が一気に高まるときは、価格が一気に高騰することがあります。
逆に、太陽光発電の供給が多く、気温も穏やかで消費が少ない昼間などには価格が低下しやすくなります。
市場連動型プランでは、JEPXの価格に一定の手数料を加えた金額で電気料金が設定されるよ!
2020年~2021年の価格高騰とその要因
2020年12月から2021年1月にかけて、日本卸電力市場では異例の価格高騰が発生しました。
価格高騰により、市場連動型プランを契約していた家庭や事業者において、電気料金が通常の2倍から5倍以上に跳ね上がるといった事態が全国で見られました。
おもな要因としては、下記の2つがあげられます。
- 記録的な寒波による需要増加
- 液化天然ガス(LNG)や石炭の価格高騰
電気料金が高くなったことで、新電力の顧客離れや倒産リスクを加速させる事態へとつながりました。
適切なリスクヘッジをしなければ、事業者も消費者も大打撃を被ってしまうんだね。
政府・経産省のガイドライン概要
電力価格高騰による混乱を受けて、経済産業省は市場連動型プランに関するガイドラインを策定し、電力会社への対応を求めました。
具体的な内容には、以下のような項目が含まれています。
- 価格変動の可能性や具体的な事例の説明
- 料金の計算方法や内訳の明示
- リスク通知機能の推奨
- 契約期間や違約金の明記
このガイドラインにより、消費者保護と市場の健全な発展の両立が図られています。
消費者は価格変動リスクを正しく理解し、適切に選択できるようになるといいね!
市場連動型プランのメリット

市場の実勢価格を直接反映する料金体系には、従来の固定料金プランにはないさまざまなメリットがあります。
ここからは、市場連動型プランのメリットを3つ紹介していきます。
- “安い時間帯”を選べるので自由度が高い
- 燃料費調整は存在しないケースが多く仕組みがシンプルで分かりやすい
- 太陽光や蓄電池と組み合わせればさらにおトクになる
“安い時間帯”を選べるので自由度が高い
市場連動型プランの最大のメリットは、電力価格が安い時間帯を自分で選んで利用できる自由度にあります。
卸電力市場の価格は時間帯により大きく変動し、特に深夜や太陽光発電が豊富な昼間は価格が下がる傾向があります。
そのため、電気を多く使うタイミングを意識的にシフトできる家庭には、非常に有利な料金体系です。
たとえば、洗濯機や食洗機を昼間に回したり、エコキュートや蓄電池の充電を夜間におこなったりすることで、家庭全体の電気代をおさえられます。
特に共働きや在宅ワークが多い世帯、スマート家電を導入している家庭にとって、有力な選択肢となるでしょう。
電力価格を確認できるアプリやウェブサイトを活用すれば、より効率的に電気を使えるね!
燃料費調整は存在しないケースが多く仕組みがシンプルで分かりやすい
市場連動型プランでは燃料費の変動はすでに市場価格に織り込まれているため、燃料費調整額が別途加算されることはありません。
そのため、料金体系がシンプルで分かりやすいというメリットがあります。
電気料金を正確に把握したい、透明性を重視したい家庭には、納得できるプランといえるでしょう。
仕組みが明快だから、消費者自身が価格の動向を確認しやすい点はうれしいね!
太陽光や蓄電池と組み合わせればさらにおトクになる
市場連動型プランは、太陽光発電システムや家庭用蓄電池との相性が非常によいのが特徴です。
たとえば、日中に太陽光で発電した電力を自家消費しつつ、安い深夜の時間帯に蓄電池を充電しておけば、高騰する朝晩のピーク時間帯には電力会社からの電力購入を抑えられます。
このように効率的なエネルギー管理をすることで、実質的な電力の購入単価を大幅におさえられ、市場価格の乱高下にも柔軟に対応できます。
家庭内のエネルギー自給自足の比率を高めておけば、電気料金の急上昇リスクを緩和しつつ、ライフラインの安定確保にもつながるよ!
市場連動型プランのデメリット

市場連動型プランは電力の卸売市場価格に連動するため、価格の急騰や変動リスクが伴います。
必ずデメリットの内容を把握してから、乗り換えを検討するとよいでしょう。
- 市場価格の高騰により電気代が高くなるケースがある
- 市場価格の変動により月々の電気代が予測しづらい
- 電力会社が倒産すると新たな企業に変更する手間がかかる
市場価格の高騰により電気代が高くなるケースがある
市場連動型プランの最大のデメリットは、予期せぬ価格高騰リスクです。
日本卸電力取引所では、電力の需給状況に応じて30分単位で価格が決定されます。
冬季や夏季などの電力需要ピーク時や発電所のトラブル、国際情勢の変化などによって、一時的に市場価格が数倍に跳ね上がる事例が過去に発生しています。
市場価格の高騰に有効なのが「上限価格(キャップ)」です。
上限価格があれば、市場価格がどれだけ高騰しても設定された上限を超えることはないため、家計への影響を一定範囲内におさえられます。
しかし、すべての事業者が上限を設けているわけではありません。
上限なしプランを選んでしまうと、価格高騰時に想定外の請求を受ける可能性があります。
契約前には、必ず上限設定の有無を確認することが重要です。
市場連動型プランのメリットとリスクの両面を把握して、高騰リスクへ備えておくことが大切だよ。
市場価格の変動により月々の電気代が予測しづらい
市場連動型プランでは市場価格が変動する仕組みのため、月々の電気代が予測しづらいという問題があります。
結果として、利用者にとって予期せぬ料金負担が発生することが考えられます。
特に家計管理に厳密な家庭や、固定支出が限られている子育て世帯・年金世帯などでは、精神的な負担も大きくなりやすいです。
また、家族間で電気使用の時間帯を統一しづらい点にも注意が必要です。
自分だけが電気を使用する時間帯に配慮していたとしても、ほかの家族が協力しなければ高額請求につながる可能性があります。
家計の収支が厳しい家庭や、急な出費に対応する余裕がない場合は、電気料金の予測がしやすい固定単価プランのほうが安心できるケースもあるよ。
電力会社が倒産すると新たな企業に変更する手間がかかる
市場連動型プランを提供している新電力は、大手電力会社に比べて資本体力が弱い傾向があります。
2021年初頭では市場価格高騰を受け、倒産や撤退を余儀なくされた新電力会社もありました。
新電力が破綻した場合、契約者は最終保証供給という制度により、一時的に地域の大手電力会社から電力供給を受けることとなります。
ただし、最終保障供給は通常料金よりも割高なケースが一般的です。
また、新たな電力会社との契約手続きをおこなう必要も生じます。
市場連動型プランを選ぶ際は、提供元の企業体力や過去の運営実績を調べておくことが重要です。
価格の安さだけではなく、経営の安定性や緊急時の対応体制なども含めて判断しようね!
市場連動型プランが向いている家庭・向かない家庭

市場連動型電力プランは、すべての家庭に適しているわけではありません。
電力使用の柔軟性や省エネ意識、リスク許容度によって異なります。
ここでは、市場連動型プランが向いている家庭と向かない家庭の特徴について解説していくので、どちらに当てはまっているのかを確認してみてください。
- 市場連動型プランが向いている家庭の特徴
- 市場連動型プランが向かない家庭の特徴
市場連動型プランが向いている家庭の特徴
市場連動型プランが向いている家庭の特徴はこちらです。
- 電気の使用時間帯を柔軟に変えられる家庭
- スマートフォンやアプリでの通知を活用できる家庭
- 太陽光発電や蓄電池を導入している家庭
- 節電意識が高く、エネルギー消費を細かく管理している家庭
在宅勤務やフリーランスなどで日中の電力使用を調整できる、あるいは夜間や早朝に家事をまとめておこなえる家庭は、市場価格が安い時間帯を選びやすく料金の抑制が期待できます。
また市場価格の変動をアプリや電力会社の通知で確認しながら、リアルタイムで使用を調整できる家庭は、市場連動のメリットを最大限に活かせます。
太陽光発電や蓄電池を導入していれば、自家消費で電力高騰時間帯の使用をおさえられるため、市場連動型との相性がよいです。
さらに、市場価格の動きに対応する意識と実行力を持っている家庭も、市場連動型プランを上手に活用できるでしょう。
家計管理などの管理が得意な人は、市場連動型プランが向いているね!
市場連動型プランが向かない家庭の特徴
一方で、市場連動型プランが向かない家庭の特徴も見てみましょう。
- 電気の使用時間帯が固定されている家庭
- 価格変動に対して不安やストレスを感じやすい家庭
- ITリテラシーが低い家庭
- 電力使用量がもともと多く、削減余地が少ない家庭
小さな子どもがいたり共働きで夜間しか家事ができなかったりする家庭は、市場価格の安い時間帯を狙って使用時間をシフトするのが困難です。
そのため、市場高騰のリスクをダイレクトに受けてしまいます。
また、電気代が毎月変動し、料金が読みにくいことに対して不安を覚える家庭も不向きです。
市場価格をアプリで確認し、通知を受けて行動を変えるといった対応がむずかしい家庭では、価格情報を活かせず知らぬ間に高額請求となる危険性があります。
常時エアコンや医療機器などを使用する必要がある家庭などは、常に電力を使用するため、固定単価プランのほうが安心です。
柔軟な対応がむずかしい環境にいる人は、無難に固定単価プランを選んでおけば、電気料金が大きく変動する心配がないよ。
契約前にチェックすべきポイント

市場連動型プランを選ぶ際には、事前に確認すべき重要なポイントがいくつかあります。
契約後のトラブルを避けるためにも、下記の項目を入念にチェックしましょう。
- 上限価格と下限価格の設定の有無とその金額
- 使用データの見える化に対応しているアプリの有無
- 乗り換え/解約の手続きと費用
上限価格と下限価格の設定の有無とその金額
市場連動型プランを検討する際、もっとも重要なチェックポイントは料金の上限価格の設定です。
上限価格があれば、市場がどれほど高騰しても上限価格内におさまるので、家計への影響をある程度おさえられます。
また「下限価格(フロア)」の設定も確認すべきポイントです。
下限価格があると、市場価格が極端に下がった場合にも設定された下限以下にはならないため、十分な恩恵を受けられない可能性があります。
上限価格はいくらか、また下限価格はあるかを確認しておくことが大切です。
消費者としては、上限ありで下限なしのプランが理想的だね!
使用データの見える化に対応しているアプリの有無
市場連動型で節約を実現するには、電気の使い方を見える化して、どの時間帯にどれくらい使っているかを把握することが不可欠です。
そのため、電力会社が提供する専用アプリやマイページが使いやすいかどうかは非常に重要なポイントです。
下記のポイントをチェックできるアプリがあれば、効率よく電気を使用できます。
- 翌日の時間帯別予測価格の通知
- 価格高騰時のアラート機能
- 実際の使用電力量と料金のリアルタイム表示
- 月間の使用状況と料金の予測機能
など
契約前に、アプリの機能性やレビュー評価などを確認しておこう!
乗り換え/解約の手続きと費用
電力会社との契約は長期的なものになりがちです。
ただ、市場連動型プランの価格に不安を感じたとき、すぐに固定単価プランへ切り替えられる柔軟性は重要な保険となります。
そのため、契約前には下記のポイントを確認することをおすすめします。
- 最低利用期間の有無
- 解約手数料の金額
- 解約の申込方法と受付時間
- 解約から切替完了までの期間
新電力会社の中には「契約期間なし」「解約金ゼロ」をうたっている企業もあるから、大きな安心材料になるね!違約金がかからないおすすめ電気会社について知りたい人は、こちらの記事を読んでみてね!

市場連動型プランをお得に活用するためのポイント

市場連動型プランの恩恵を最大化するには、工夫やテクニックが有効です。
市場連動型プランでは、電気代が30分ごとに変動するため、いつ使用するかが非常に重要です。
夕方の高い時間帯を避けて、日中などの安い時間帯に家電を集中的に使用することで、月間で数千円規模の差が生まれます。
多くの電力会社が提供するスマートフォンアプリでは、翌日の時間帯別価格を前日に通知する機能があります。
通知機能をオンにしておけば、具体的な節電行動につなげられるでしょう。
スマホ通知を活用して、日々の生活の中に電力価格を意識する習慣を取り入れることが、長期的な節約の第一歩となります。
スマホ通知のタイミングはアプリによって異なるよ。スマホ通知を活かすためにも、どのタイミングで通知されるのかを確認しておこうね!
まとめ

新電力の市場連動型プランは、日本卸電力取引所の価格に連動して料金単価が変動する仕組みです。
メリットには安い時間帯を選べる自由度や、太陽光発電・蓄電池との相性のよさなどがあげられます。
一方で、突然の価格高騰リスクや料金予測のむずかしさといったデメリットも存在します。
スマホ通知を活用した価格高騰時の節電や使用時間の調整によって、市場連動型プランの長所を引き出すことが可能です。
ライフスタイルに合わせて、新電力の市場連動型プランを検討してみてはいかがでしょうか。