「会社を辞めたあとに加入する任意継続の特徴を知りたい」
「任意継続と国民健康保険のどちらに加入すればお得になるの?」
勤めていた会社を退職すると、任意継続と国民健康保険のどちらかを選択します。
適切な保険制度を選ばなければ、多額の保険料を支払うこととなる可能性があるので、事前に特徴や注意点などを把握しておくことが重要です。
そこで本記事では、任意継続に加入する条件や保険料、メリットなどを網羅的に解説しました。
本記事を最後まで読めば、任意継続の特徴が分かり、自分に合う健康保険を選べるようになります。
任意継続制度とは?

「任意継続健康保険制度」(正式名称:任意継続被保険者制度)とは、会社を退職したあともこれまで加入していた健康保険(社会保険)を継続できる制度です。
退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間があれば、退職後20日以内に手続きすることで最長2年間、退職前の健康保険に加入し続けることが可能です。
この期間を過ぎてしまうと、原則として加入できなくなるため注意しましょう。
任意継続を利用する際は、速やかに手続きをするようにしようね!
保険料の計算と支払い

任意継続健康保険に加入する場合、気になるのが保険料です。
在職中とは計算方法や負担割合が異なるため、事前にしっかり把握しておくことが大切です。
ここからは、任意継続の保険料の決まり方や支払方法について解説していきます。
- 保険料は「標準報酬月額×協会けんぽ(または組合)の料率」で決定
- 会社負担がなくなり「自己負担が2倍」になる点に注意
- 上限・下限や一括前納割引の有無
保険料は「標準報酬月額×協会けんぽ(または組合)の料率」で決定
任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額に、協会けんぽ(全国健康保険協会)や健康保険組合の保険料率を掛けて計算されます。
「標準報酬月額」とは、給与などの月額報酬を一定の幅で区分したもので、在職中の保険料計算にも使われていたものです。
つまり、退職時の給与水準がベースになると考えてよいでしょう。
保険料率は、加入している健康保険によって異なります。
協会けんぽの場合は、住んでいる都道府県の保険料率が適用されます。
健康保険組合の場合は、所属していた組合独自の料率が適用されるため、退職前に確認しておくことが重要です。
40歳から64歳までの人は、さらに介護保険料も加わるよ。
会社負担がなくなり「自己負担が2倍」になる点に注意
在職中は会社と従業員が折半していた保険料ですが、退職後は会社負担分がなくなり、全額自己負担となります。
たとえば、在職中に給与から天引きされていた保険料が月1.5万円だった場合、任意継続では3万円の支払いとなります。
任意継続では保険料が実質2倍になり、手取りが減る退職直後には大きな出費となる可能性があるため、あらかじめ試算しておくことが大切です。
特に高収入で退職した人は、自己負担が大きいことが考えられるよ。
上限・下限や一括前納割引の有無
任意継続の保険料を計算するもととなる標準報酬月額には、上限が設けられています。
高収入だった方は、在職中よりも保険料が安くなる可能性があります。
標準報酬月額の下限については、任意継続独自のものは特に設けられていません。
退職時の標準報酬月額が低い場合は、それに応じた保険料となります。
また、保険料の支払い方法として、毎月払いのほかに6か月分や1年分をまとめて前払いする一括前納制度があります。
一括前納制度を活用すると、一定の割引が適用されるため、月々支払うよりも総支払額をおさえることが可能です。
手元資金に応じて支払期間を選択するようにしよう!
任意継続のメリットは?

任意継続を利用すると、さまざまなメリットを享受できます。
ここでは、任意継続の3つのメリットについて見ていきましょう。
- 国保より保険料が安くなる場合がある
- 自己負担割合は退職前と同じ
- 扶養家族の追加保険料が不要
国保より保険料が安くなる場合がある
任意継続の大きなメリットは、国民健康保険と比較して保険料が安くなるケースがあることです。
特に扶養家族が多い方や、前年の所得が高かった方にとっては、任意継続のほうが保険料を安くおさえられるケースがあります。
国保は前年の所得や家族構成によって保険料が算出されます。
そのため、たとえ退職によって収入が激減したとしても、保険料負担が重くなる場合があるのです。
国保は、住んでいる市区町村によって計算方法や料率が異なるよ。退職前に、市区町村の窓口で国民健康保険料の概算額を試算してもらい、任意継続の保険料と比較検討することが大切だよ!
自己負担割合は退職前と同じ
任意継続制度の安心できる点のひとつが、医療機関での自己負担割合が退職前と変わらず3割のままであることです。
国民健康保険に加入した場合も基本的には同じですが、慣れ親しんだ健康保険制度の給付を引き続き受けられる安心感があります。
さらに、高額療養費制度についても、基本的には任意継続と国民健康保険の間に大きな差はありません。
退職直後は生活環境の変化も大きく、体調を崩しやすい時期でもあります。
退職前とほとんど変わらない環境を維持できるのは、うれしいポイントです。
出産時の給付や傷病手当金などは、原則として任意継続の対象外になる点に注意してね。ただし、出産育児一時金は任意継続でも受け取れるよ!
扶養家族の追加保険料が不要
任意継続の保険では、扶養家族を何人持っていても、原則として追加の保険料を支払う必要がありません。
特に子どもが多い家庭や、配偶者を専業主婦(主夫)として扶養している世帯にとって、非常に大きなメリットとなります。
国民健康保険には扶養の概念がありません。
世帯の構成員一人ひとりに対して均等割や平等割といった保険料が加算されるため、世帯人数が多ければ多いほど支払いが高くなります。
家族構成が任意継続を選択するかどうかの判断材料になることも多いよ!
任意継続のデメリットは?

任意継続制度には多くのメリットがありますが、一方で注意すべきデメリットも存在します。
費用負担や手続き期限など、制度の特徴を正しく理解しておきましょう。
- 保険料は全額自己負担
- 申請期限は「退職日の翌日から20日以内」
- 最長2年で自動的に終了する
保険料は全額自己負担
先述したとおり、任意継続を選択すると保険料は全額自己負担となります。
これまで給与から天引きされていた保険料の2倍の金額を、毎月自分で納める必要が出てくるのです。
自己負担額が増えることで、家計の負担が大きくなる可能性があります。
国民健康保険料などほかの選択肢と比較検討することが大切だね!
申請期限は「退職日の翌日から20日以内」
任意継続を選択する場合、申請期限が短いことも大きなデメリットです。
加入手続きは、退職日の翌日から20日以内におこなわなければなりません。
この期限を過ぎると任意継続の資格を失い、別の健康保険に加入する必要が生じます。
任意継続を利用したい人は、退職後のスケジュール管理と事前準備をしておき、スムーズに手続きするようにしようね!
最長2年で自動的に終了する
任意継続健康保険に加入できる期間は、最長で2年間と定められています。
任意継続健康保険は、永続的に加入し続けられる制度ではないのです。
2年間の期間満了後は国民健康保険に加入する、家族の健康保険の被扶養者になるなどの選択肢の中から選ぶ必要があります。
任意継続は、あくまで一時的なつなぎの制度としてとらえたほうが無難だね。2年後の健康保険についての計画を立てておくことが望ましいよ!
国民健康保険とどちらが得?比較のチェックポイント

退職後の健康保険選びでもっとも悩むのが、任意継続と国民健康保険のどちらを選ぶかという点です。
保険料だけでなく、受けられる給付内容や自治体の制度なども考慮して総合的に判断する必要があります。
ここからは、健康保険を比較検討する際の重要なチェックポイントを解説します。
- 高額療養費・出産手当金など給付の違いを把握する
- 自治体独自の減免制度も確認する
高額療養費・出産手当金など給付の違いを把握する
医療費の自己負担割合や高額療養費制度は、任意継続でも国民健康保険でも基本的に同じように利用できます。
しかし、一部の付加給付については違いが出てくる場合があります。
「付加給付」とは、健康保険組合が独自に定めている給付のことです。
たとえば、高額療養費の自己負担限度額がさらに引き下げられるなどがあります。
また、出産に関する給付である出産手当金は健康保険にはありますが、国民健康保険には原則としてありません。
退職後すぐに出産を控えている女性などは、出産手当金の有無も比較のポイントとなるでしょう。
給付内容を事前に確認することで、より自分に合った保険を選べるよ!
自治体独自の減免制度も確認する
国民健康保険には、自治体ごとに独自の減免制度が設けられている場合があります。
たとえば会社の倒産や解雇など、会社都合で離職した方については、国民健康保険料が大幅に軽減される特例措置があります。
この場合、任意継続よりも国民健康保険のほうが保険料負担を大きくおさえられる可能性が高いです。
自分が減免制度の対象となるかどうかを、退職前に住んでいる市区町村の国民健康保険担当窓口で確認することが重要です。
申請しなければ減免制度が適用されないケースもあるよ。減免制度の要件とともに、申請方法も必ずチェックしておこうね!
任意継続に加入する手続きの流れ

任意継続健康保険に加入すると決めたら、期限内に正確な手続きをおこなう必要があります。
また、保険料の支払い方法や、将来的に国民健康保険へ切り替える際の手続きも知っておくと安心です。
ここからは、任意継続に関する一連の手続きの流れを分かりやすく解説していきます。
- 協会けんぽ(または健康保険組合)への申請書提出
- 支払い方法(口座振替・銀行窓口)と納付期限
- 任意継続→国保へ切り替えるときの届出
協会けんぽ(または健康保険組合)への申請書提出
退職日の翌日から20日以内に、協会けんぽまたは在籍していた健康保険組合へ「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出します。
申請期限を過ぎると制度を利用できないため、退職日が決まった時点で早めに準備をはじめましょう。
任意継続被保険者資格取得申出書は、協会けんぽもしくは健康保険組合のホームページからダウンロードできます。
また、郵送にて申請する場合、本人確認書類や退職証明書などが必要となる場合があります。
郵送で申請する場合は、配達にかかる日数も考慮しておこうね!
支払い方法(口座振替・銀行窓口)と納付期限
任意継続の支払方法には、下記の3つがあります。
- 毎月送られてくる納付書で納付する
- 毎月口座振替により納付する
- 一定期間分を一括して前納する
一般的には、口座振替や金融機関窓口での納付書払いが利用可能です。
また、6か月または1年分をまとめて前納することで、割引が適用されます。
自分に合う支払方法を選択して、納付期限を過ぎないようにスケジュール管理をしましょう。
納付期限までに保険料を納付しないと、任意継続被保険者の資格を喪失してしまうよ。国民健康保険などに加入することになるから、忘れないようにね!
任意継続→国保へ切り替えるときの届出
任意継続健康保険の加入期間は、原則として2年間です。
2年経過後は資格を喪失するため、国民健康保険への加入手続きなど、次の健康保険への切り替えが必要となります。
任意継続の期間満了を待たずに資格を喪失したい場合は「任意継続被保険者資格喪失申出書」を加入している協会けんぽまたは健康保険組合に提出することで、申出書が受理された日の属する月の翌月1日に資格喪失します。
後日「任意継続被保険者資格喪失通知書」が送られてくるので、市区町村の国民健康保険課に提出して国保への切替手続きをおこないましょう。
任意継続被保険者資格喪失申出書を一度提出すると、取り消しはできないよ!しっかりと判断したうえで、国保への切り替えを検討してね。
こんな人に向いている/向いていない

任意継続健康保険は、すべての人にとって最適な選択肢とは限りません。
家族構成や収入状況、今後の予定などによって、向き不向きがあります。
ここからは、任意継続が向いている人と向いていない人の特徴について、具体的にみていきましょう。
- 向いている人:扶養家族が多い、退職後すぐ再就職予定がある
- 向いていない人:独身・高収入で国保の方が安いケース
向いている人:扶養家族が多い、退職後すぐ再就職予定がある
任意継続健康保険が特におすすめなのは、まず扶養家族が多い人です。
先述のとおり、任意継続では被扶養者の追加保険料がかかりませんが、国民健康保険では加入者一人ひとりに保険料が発生します。
そのため配偶者や子どもなど、扶養している家族が多ければ多いほど、世帯全体での保険料負担をおさえられる可能性があります。
また、退職後すぐに再就職の予定がある人にもおすすめです。
短期間であれば、国民健康保険への切り替え手続きの煩わしさをはぶき、慣れた健康保険制度を継続できるメリットがあります。
再就職先で新しい健康保険に加入した場合は、速やかに任意継続の資格喪失手続きをしようね!
向いていない人:独身・高収入で国保の方が安いケース
一方で、任意継続健康保険があまり向いていないケースもあります。
たとえば、独身や扶養家族がいない人は、扶養に関する任意継続のメリットを享受できません。
このような人は単純に保険料の総額で比較して、より負担の少ないほうを選択するのが合理的です。
また、在職中の収入が高かった人は、国民健康保険のほうが保険料が安くなる可能性があります。
さらに退職して収入が大幅に減少した場合、国民健康保険であれば所得に応じた保険料軽減や減免制度の対象となることも考えられます。
結果的に、国民健康保険のほうが安くなるケースも少なくありません。
条件に該当する人は、任意継続と国民健康保険の保険料を比較してみよう!状況によっては、保険料の総支払額にかなりの差が生じることもあるよ!
まとめ

健康保険の任意継続制度は、退職後も2年間、それまでの健康保険に継続して加入できる仕組みです。
扶養家族が多い世帯や、退職後にすぐ再就職予定のある方にとっては多くのメリットがあります。
一方で、保険料の自己負担が2倍になる点や、手続きに期限があることには注意が必要です。
一方の国民健康保険は、自治体によって保険料の差があり、収入が大幅に減るケースでは任意継続よりも負担が軽くなることもあります。
特に独身で扶養家族がいない方や、高所得者で任意継続の標準報酬月額が高く設定されている方には、国民健康保険のほうが有利となる場合もあるでしょう。
いずれを選ぶにしても、制度の仕組みや給付内容、保険料の計算方法を理解したうえで、自分自身や家族のライフプラン・収支状況と照らし合わせて判断することが重要です。
本記事を参考にして、最適な健康保険制度を選ぶようにしましょう。